祭りの夜。僕は浴衣に身を包み、友人たちと笑い合いながら夜店を回っていた。軽い疲れと満足感に包まれて家路についた。
 自宅の玄関を開けると、異様な光景が広がっていた。夜店のまま、家の中にも露店が並んでいた。売り子たちは黙々と商品を整えていた。一瞬、錯覚に襲われたかと思った。
 逃げるように部屋へ入ると、鏡に映るのは自分の顔だった。だがその顔が露店の飴細工のように歪んでいた。不意に我に返った僕は声を上げることもできず、ただひどく慄いた。何が起きたのか理解できず、無力感に襲われた。
 その日から我が家は毎夜祭りと化した。昼間は普通の家だが、夜になると露店が並び、家族の顔は飴細工のように醜く歪むのだ。

タイトル

夜店

タグ
祭り
投稿者
S. A.
投稿日
2023-07-16
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