私が子供のころ、私の家族は毎年夏になると、山の中にある古びた家族の古民家で休暇を過ごしていました。
ある年の夏、私たちは再びその古民家に足を運びました。古民家の裏には小川が流れており、そのさらに向こうには古くからの墓地が広がっていました。夜、窓の外を見ると、墓地の方向から淡い光が見えることがありましたが、家族の誰もそのことに気付いていないようでした。
ある夜、私は好奇心からその光の正体を確かめるために古民家を抜け出しました。足元を照らしながら墓地に近づくと、その光は数人分の人影から放たれていることに気づきました。彼らは輪になって何かを囲んで踊っていました。
その姿はまるで昔の村の風景のようで、恐怖よりも興味が湧いてきました。よく見ると彼らの間に一つだけ、比較的に新しい墓石があるようでした。
その様子をもっと近くで見たいと思った私は、少しずつ息を殺して抜き足差し足で近づいていきましたが、足音に気づかれたのか影が一斉に、一瞬のうちに姿を消し、あとは月明かりに照らされた墓石だけが残されました。
私は影が消えた後の、墓石に近づきその墓石に刻まれた名前を読みました。それは私の名前でした。
驚きのあまり後ろに飛び跳ねて逃げ出し、古民家に戻ると、家族は私を探して慌てていました。私の話を聞いた父は、その墓石は昔からあったもので、名前の一致は偶然だと言いましたが、私はそれ以降、その古民家には一度も足を運ぶことはありませんでした。
- タイトル
踊る影
- タグ
- 山影墓地
- 投稿者
- S. A.
- 投稿日
- 2023-08-12