昔、ある田舎町に住んでいた時のこと。地元の人々とつながりを持つために、この町に慣れるまでの間、毎日朝方の散歩を決行していた。
 この日も朝が来るのを待つ間、散歩の準備をしていた。時間が来たら、町を歩き始めた。田んぼや川、古い民家が並ぶ道。そして、いつもと同じように、私の道のりの一部となっていた交差点にさしかかった。前方から自転車に乗った中年の男性が近づいてきて、交差点で左に曲がっていった。その顔は思わず目を逸らすほど疲れ切っていた。
 翌日も同じ時間に、同じ道を歩き始めた。そして、再びその交差点にたどり着いた。すると、昨日と同じく、自転車に乗った中年の男性が前方から近づいてきて、交差点で左に曲がった。しかし、その男性の顔には昨日の疲れがなく、それどころか顔全体がひどく腫れ上がっていた。何が起こったのか知りたくなり、心配になった。
 次の日、再び交差点に来ると、今度はその男性は足を引きずりながら自転車に乗っていた。そして、顔の腫れはさらにひどくなり、目もほとんど開いていなかった。私は何か声をかけようとしたが、男性はすぐに去ってしまった。
 それからというもの、毎日のように交差点でその男性と遭遇し、彼の状態が日々悪化していくのを見続けることになった。体全体が不自然に歪み、皮膚がこすれて剥け落ちているように見えた。ついには、彼の存在が怖くて、もうその交差点に行くことができなくなった。
 後で地元の人々から聞いた話では、その男性は数年前に交通事故で亡くなった地元の住人だったという。彼が亡くなった交差点は、私が毎日通っていた交差点だった。そのことを知ってから、私は暫くの間、町を歩くことすら億劫になっていた。
 それから数年が経った今でも、私はその恐怖を忘れることはできず、いまだにあの交差点を避けて歩くようにしている。亡くなったはずの男性が、なぜ私の前に現れ、なぜその姿が日々悪化していったのか。その理由を知ることはできない。

タイトル

交差点の男

タグ
交差点
投稿者
S. A.
投稿日
2023-07-13
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