私は友人と一緒に村の祭りに参加した。その夜、祭りの目玉であるくだんの予言を見ることになった。くだん、それは人の顔を持つ牛の予言者と言われている。
祭りの会場へと足を進めると、強いにおいが鼻をつく。それは動物のにおいと、焼ける木のにおいの混じったものだった。そのにおいに導かれ、私たちは篝火の焚かれた祭りの中心地へと進んだ。中心地には大きな木製の檻があり、その中にはくだんが。
くだんの姿は信じられないほど奇妙だった。人間の顔を持つ牛、その顔は白い肌に、黒い瞳。だが、その顔の表情は無感動で、まるで感情を持っていないかのようだった。
皆が集まり、一斉にくだんの予言を待つ。すると、くだんが口を開き、人間の言葉で語り始めた。村の未来、幸福、繁栄。しかし、予言の最後に、その声は変わった。声は低くなり、話すスピードが遅くなり、言葉は恐ろしくなった。
彼は村の終わりを予言した。病気、飢饉、そして死。その言葉は空気を凍りつかせ、人々の声を奪った。その後、くだんは静かに倒れ、動かなくなった。それは予言した後に死ぬと言われているくだんの宿命だった。
私は友人と顔を見合わせた。恐怖を湛えた彼の黒い瞳が徐々に色を失っていった。篝火が生んだ影が彼の冷たい頬に揺れていた。
- タイトル
くだん
- タグ
- 祭り
- 投稿者
- S. A.
- 投稿日
- 2023-07-19