友達と訪れた小さな町で、目に飛び込んできたのは新聞販売所で配られている「号外」の文字。時折町に訪れる謎の音波によって、人々が行方不明になっていると報じられていた。友達と顔を見合わせ、声にならない笑いが漏れた。
夜、友達と居酒屋で飲んでいると、外からささやかな音が聞こえてきた。外に出てみると、まるで水晶のような清廉な音。皆が耳を傾けていたが、すぐに音は消えた。一瞬、全員が放心状態になってしまった。
次の日、町でまた音が聞こえた。その音が友達の耳に入り、彼の体が青白い光を放ちながら霧のように消えていった。私は逃げるようにその場を離れ、新聞販売所に駆け込んだ。
そこにはまた「号外」が。しかし、今回は異なっていた。文字が動き、耳にささやかな音が響いてきた。血色を失った紙面から、人々が次々と現れ、私を引きずり込もうとしていた。彼らの顔はひどく歪んでおり、目は空洞、口は奇怪な形に裂けていた。恐怖で体が硬直した。
「号外」が鳴る音と共に、私の両手が紙面に吸い込まれていった。それが私の最後の瞬間。私の体は黒く歪んだ文字の渦の中へと吸い込まれていった。
町は次第に平穏を取り戻し、人々の消失も止まった。ただ、新聞販売所には「号外」が並んでいた。その文字が微かに動き、耳に聴こえるささやかな音。町の人々はそれを避けるようになり、未だに町にはその音が響き渡っている。
- タイトル
号外
- タグ
- 新聞紙
- 投稿者
- S. A.
- 投稿日
- 2023-07-13