逆手招き
まず始めに私がこの夜遅く、散歩に出た事を話すところから始めましょう。それは満月の夜で、星々が私を見下ろし、明かりのない道路が月光によってかすかに照らされていました。目的もなく、ただ静寂を楽しんで歩いていたのです。
私の道は町の公園に通じていました。公園に入った途端、遠くに小さな人影が見えました。子供のような小ささで、何か不思議な動きをしているように見えました。それがこの出来事の起こりでした。
近づくと、その人影は何か私を誘うように手を振っていることが分かりました。しかしその手の動きは、一般的な手招きとは何か違いました。反転し、手の甲が私の方を向いているのです。それは何となく不気味だったので、私はその場を立ち去ることにしました。
次の日、私は昼間公園に行くことにしました。昨夜の出来事を思い出し、今度は異様な感覚がありました。しかし、全く異なる日中の光の下では、その公園は何も変わっていないように見えました。
ところが、私が公園を出ようとしたとき、同じ人影が再び現れました。明るい昼間にも関わらず、その子供のような形は黒い影として存在し、再びその奇妙な手招きを始めました。その手招きが再び現れた瞬間、公園の空気は一変しました。
恐怖と混乱で心臓が高鳴る中、私は立ち尽くしました。そして、何を恐れているのか理解できずに、彼の手招きに従うことにしました。
私が彼に近づくと、その人影は地面に溶け込み消えていきました。しかし、彼が立っていた場所には、背筋が凍るようなものが残されていました。一枚の古い写真、それは手を振っている子供の写真でした。その子供の手の甲は、写真に向かっています。まるで私を呼んでいるかのように。
その瞬間、私の背後から冷たい風が吹き、公園の中心にある池の水がざわつき始めました。その池の水から、もう一つの子供の手がゆっくりと現れました。私を再び呼んでいるようでした。
私が気を失うほどの恐怖を感じるなか、池から現れた手はゆっくりと水面下に沈んでいき、再び公園は静寂に包まれました。