冷たい手

ある夜、暗い部屋で、弟との事を思い出していました。子供の頃、私たちはよく森で遊んでいました。森の中には小さな湖があり、私たちの秘密の遊び場でした。

その日も普通に遊んでいたのですが、何かが違いました。弟が湖の向こう側を指さしました。そこには、奇妙な影が蜃気楼のように、ぼうっと揺らめいていました。それが何であるかを知るために、私たちはその影へと近づいていきました。

手を繋ぎ、湖の水面が静かに波立つ様子を観察しながら、その影へとゆっくりと進みました。そして、その影が何であるかをついに確認した瞬間、心臓が冷たい氷のようになりました。

湖の向こう側に立っていたのは、弟の姿そのものでした。まるで鏡のように私たちの動きを真似ていました。しかし、その目は真っ黒で、まるで深淵を覗いているかのようでした。

私は弟を引っ張って逃げようとしましたが、弟はその場に凍り付いて動けませんでした。弟の顔からは恐怖が滲み出ており、その恐怖が私にも伝わってきました。

そして、突如としてその二つ目の弟が私たちに向かって猛然と走ってきました。その表情は、どこか人間離れしたもので、その口からは黒い液体が滴り落ちていました。

私は弟の手を引き、全力で逃げ出しました。弟の手は冷たく、震えていました。その後、二つ目の弟が何かを叫んでいるような声が聞こえてきましたが、私たちはそれを無視し、家まで走り続けました。

その後、弟と私は二度とその森に足を踏み入れることはありませんでした。それ以来、私は弟と、家の中でも常に手をつなぎ、一緒にいることを約束しました。弟の手は、あの日からずっと冷たいままです。